天才ウディ・アレンの魔法のような話術に魅了される
人生の愛と夢、そして罪と罰をめぐる極上の人間ドラマ
きらびやかなビジネスの世界での成功を夢見るイアンと、酒とギャンブルと恋人と過ごす日々にそれなりの充足感を得ているテリー。そんな兄弟が"カサンドラ・ドリーム"と名付けた小型クルーザーを購入したことから、彼らの人生がドラマチックにうねり出す。イアンは若く美しい舞台女優アンジェラに心奪われ、彼女との優雅な新生活を実現させようと焦りを募らせていく。一方、テリーは出来心でのめり込んだポーカー勝負で惨敗し、巨額の借金を背負うはめに。その苦境を救ってくれるはずの大金持ちの伯父ハワードから"ある頼みごと"を持ちかけられた兄弟は、とてつもない代償を伴う人生の賭けに身を投じていく......。
『マッチポイント』『タロットカード殺人事件』に続くロンドン3部作最終章!
幾多の名作を世に送り出したニューヨークを離れ、映画作りの拠点をヨーロッパに移したウディ・アレン。女性たちの恋愛心理をユーモアたっぷりに綴った『それでも恋するバルセロナ』も記憶に新しい彼が、『マッチポイント』『タロットカード殺人事件』に続くロンドン3部作の締め括りとして撮り上げたのが、この『ウディ・アレンの夢と犯罪』である。
人生の不条理をお好み次第でコメディ、ミステリー、ロマンス、心理ドラマなどに仕立ててきたアレンが、今回は究極の"悲劇"に挑戦。ギリシャ神話やドストエフスキーに代表されるロシア文学の影響を色濃く滲ませながら、破滅への坂道を転がり落ちる兄弟の姿を映し出す。人間という生き物の切なさやおかしさを、丸ごとあぶり出す鋭い観察眼とユーモア。そして登場人物がところどころで出くわす"運命の分かれ目"に観る者を立ち会わせ、さりげなく手に汗握らせるサスペンスの妙。さすがはアカデミー賞の脚本賞ノミネート歴が実に14回を数える話術の達人、アレンの魔法の威力に脱帽の一作と言えよう。
悲劇の兄弟に扮したユアン・マクレガー&コリン・ファレル
アレン作品には名だたる大物俳優がこぞって出演を熱望しているが、今回その夢を叶えたのはユアン・マクレガーとコリン・ファレル。マクレガーは、言わずと知れた『スター・ウォーズ エピソード1〜3』『天使と悪魔』などのハリウッド超大作で活躍しつつ、インディペンデント映画でも持ち前のナイーブな存在感を発揮しているトップスター。一方、ファレルも『アレキサンダー』『ニュー・ワールド』『マイアミ・バイス』で堂々と主役を務め、ワイルドかつセクシーな魅力を放ってきた。そんな二大俳優に、対照的な性格の兄弟役をあてがうという意表を突いたキャスティング! 二人の役者魂みなぎる迫真の演技から一瞬も目が離せない。