ロンドン南部に暮らすブレイン家の長男イアン(ユアン・マクレガー)は、父親が営むレストランで働きながら、バラ色の未来を思い描いていた。カリフォルニアのホテル事業に投資し、そのリターンを元手にビジネスマンとして新たな人生を踏み出す。それが労働階級の日常に満足できないイアンの夢だった。
イアンほど切れ者ではない弟テリー(コリン・ファレル)の夢は、もっとささやかで現実的なものだった。自動車修理工場に務める彼は、酒とギャンブルをこよなく愛し、さしたる不満もない気楽な日々を送っている。いずれ優しい恋人ケイト(サリー・ホーキンス)との庭付きマイホームさえ手に入れられれば、何もほかに望むものはなかった。
内に秘めた夢も性格も対照的なのに、持ちつ持たれつの良好な関係を保っているイアンとテリーは、格安の6000ポンドで売りに出されていた小型クルーザーをローンで共同購入する。テリーがドッグレースで大穴を当てた犬の名にちなんで"カサンドラズ・ドリーム号"と名付けたその船は、前の所有者が死亡して売りに出された処分品だったが、兄弟はそんな不吉なことに気も留めず、快適な初航海を満喫するのだった。
ところが思わぬ落とし穴が待っていた。テリーがマイホームの資金ほしさに危険なポーカー勝負に手を出し、ヤミ金相手に9万ポンドもの借金をこしらえてしまったのだ。
そのとき奇跡のように救世主がロンドンに舞い降りた。カリフォルニアや中国で美容関係の事業を行っている伯父のハワード(トム・ウィルキンソン)が、家族と会うためにやってきたのだ。
一族きっての成功者であるハワードならば、きっとテリーの借金もイアンのホテル投資話の軍資金もやすやすと肩代わりしてくれる。ところがハワードは「実は君たちに相談がある」と意外な交換条件を切り出し、すっかり大船に乗った気分の兄弟に冷や水を浴びせた。
「マーティン・バーンズという男を処分するんだ」
ホテルのレストランで標的であるバーンズの顔を確認した兄弟は、手製のピストルを胸元に忍ばせ、いよいよ殺人を実行しようとする。
はたして計画は成し遂げられるのか。そしてイアンとテリーは人生の輝きを取り戻せるのか。運命の女神のみぞ知る彼らの行く手には、予想だにしなかった結末が待ち受けていた......。