マジシャンの恋人が謎の失踪をしてしまい、心を病んでしまったルイーズ。
施設に入居した彼女が生んだ息子のエンジェルは、不思議な特異体質を持っていた。
誰の目にも、その姿が見えないのだ。
世間との接触を一切絶ち、懸命に息子を育てるルイーズ。勉強も遊びも、いつも一緒。
特にエンジェルは、ママが小さい頃に両親に連れられて行ったという、湖のほとりにある小屋の話が大好き。
ルイーズの深い愛情に包まれて、彼は優しい男の子に育っていった。
そんなある日。エンジェルはふと施設の窓から近所の屋敷を覗き見る。
初めて見る外の世界の人の姿。
彼はそこにいた女の子のことが気になって仕方がない。
まもなく勝手に施設を抜け出し、近所の屋敷に向かうエンジェル。
木漏れ日の中、庭でブランコに乗っていたのは、盲目の女の子マドレーヌだった。
「こんにちは、はじめまして」
「……ぼくのことが見えるの?」
「見えないけど、声と匂いがするから」
エンジェルの秘密に気がつかないマドレーヌ。次第にふたりは心惹かれ合っていく。かくれんぼをしたり、草の上に並んで寝そべったり。互いの体や存在を感じ合い、やがてキスも……。
この小さな恋人たちは、ふたりきりの幸福な時間を日々過ごしていった。
しかし一方、ルイーズの容態はどんどん悪くなるばかり。
そんな折、マドレーヌは目の手術を受けることになる。
視力が回復すれば、あなたの姿を見られる。そう言うマドレーヌに対し、エンジェルは自分の秘密を伝えることができない。
「待ってるよ……ずっと。毎日毎分毎秒、君を想うよ」
そして数年の歳月が流れた。
ルイーズは、その間に亡くなってしまった。
ある日、とうとうマドレーヌが屋敷に戻ってくる。
すっかり美しい女性に成長した彼女。
目の手術も成功し、視力は完全ではないが回復。ひとりでどこにでも行動できるほどには見えるようになっていた。
マドレーヌは、エンジェルの姿を探す。
しかし彼はどこにもいない。
再び会えることを願って、マドレーヌは亡きルイーズのお墓に手紙を置いてくる。
「エンジェル、戻ったわ。どこにいるの? 手紙を読んだら、姿を見せて」
実は、すぐそばに居たエンジェル。彼はマドレーヌに返事の手紙を書いた。
「昔みたいに会いたい。目を閉じてくれる?」
こうして再会したふたりは、互いを強く求め、また夢心地の時間を過ごすことになる。
しかし、あなたの姿を見たいというマドレーヌの想いは消えない。
こうしてエンジェルは、いよいよ自分の秘密を彼女に打ち明けることになる……。