映画「エゴン・シーレ 死と乙女」公式サイト » Interview

Interview

監督としての画家

画家の映画を作るとき、「そもそも描くとはどういうことだろう。 描くことにどんな意味があるのだろう」という疑問が生まれます。シーレを映画にするにあたり、この疑問も追求しています。

シーレは写真も撮っていたことが分かりました。彼の写真には、しばしばとても洗練されたポーズが目につきます。彼はそれまでにない表情豊かなポーズを作り上げました。肉体を語るための表現手段として、シーレは肉体を使ったのです。肉体だけで人間について何が語れるのでしょうか。これは監督にとって、とても興味深いことです。

私たちも映画でこのアプローチについて語りたいと考えました。どのようにすればあれほど表現豊かなポーズが作り出せるのでしょう。これは、まさに演出です。つまり画家は自分の絵の監督だと言えるでしょう。

シーレのスケッチブックは、完全なコレクションが存在します。彼は、人生の瞬間を留めておけるようにと、いつもスケッチブックを持ち歩きました。監督として彼は自分に問いかけます。表情豊かなポーズとはどんなだろう、視覚的に面白い瞬間とはどんなだろう。それをスケッチブックに描き留めるのです。彼の絵の 構成は細部まで考え尽くされていて、決して描きながしたものはありません。それが見るということであり、私たちがこの映画でも伝えたかったことなのです。

主役のノア・サーベトラについて

私のコンセプトで重要なのは、若者を描くことにその本質があ るということでした。俳優が若者を演じるのではなく、本当に若い者がカメラの前に立つということです。若く、同時に、人生経験が豊富な人物を見つけるのは非常に難しいことだとは、初めから分かっていました。ですが、非常に複雑なキャラクターを演じるには人生経験が必要だったのです。そのため、私たちはキャスティングにすでにとても長い期間をさいていました。そしてついに、アマチュアを起用するか、演劇学校の学生から起用するか、どちらかにする必要があるのではないかと考えました。

俳優たちは天才を演じなければならないとき、たいていどこか 退屈か、もしくは誰かの模倣になってしまいがちです。私たちは芸術アカデミーの若い画家を起用することも試してみました。そうすれば画家の行動を非常にうまく表現することはできます。しかし台詞や状況を表現することは無理でした。私たちはようやく一人の青年を見つけました。彼は写真モデルとしての経験があり、映画俳優を目指していました。文章を2つ覚えることもできませんでしたが、最初から私は彼にシーレと同じような人を惹きつけるエネルギーを感じたのです。それで、私は冒険しようと決心をしました。

1年以上にわたり、彼にこの役について手引きをしました。実際のところ、彼自身も俳優になりたいと考えていたので、演劇学校に通わせたのです。そして、ついには有名なエルンスト・ブッシュ演劇大学の入学試験 にも合格したのです。 さらに、彼は映画の中で自分が絵を描けるようにと、芸術アカデミーの「彩色画と素描」の講義を2学期 間受講します。エゴン・シーレという非凡な人物と同じように、とても重要なエネルギーを持ち合わせる一人の青年を見つけられて、私は幸運でした。