主人公はさえない中年男で、舞台は田舎の小さな港町。出演するのは通好みの実力派、それも中高年ばかりと派手さゼロだというのに、公開直後からイギリスであれよあれよという間に10億円を稼ぎだし、続編が決定したのが、本作『フィッシャーマンズ・ソング コーンウォールから愛をこめて』だ。イギリス南西部コーンウォール地方の小さな港町、ポート・アイザック。1995年に慈善事業の資金集めに現役漁師が中心となって結成した舟歌バンド“フィッシャーマンズ・フレンズ”と、彼らを発掘した敏腕マネージャー、イアン・ブラウン(“ザ・ストーン・ローゼズ”のボーカルとは別人)による、嘘のような本当のサクセスストーリーをモデルにしたヒューマンドラマである。
2010年にメジャーレーベルのアイランド・レコードと100万ポンド相当の契約を交わし、1stアルバム「Port Isaac’s Fisherman’s Friends」が全英チャートでトップ10入りを果たしたフィッシャーマンズ・フレンズ。揃いのPコートとジーンズ、ワークブーツと飾り気のない男たちが歌うのは、イギリスで生活したことのある人なら耳にしたことのある舟歌や民謡だ。いかつい中年男たちが力強い歌声で美しいハーモニーを奏でるというギャップ、そしてバンド名がイギリス人なら誰しもがお世話になっている国民的ミント系トローチと同じという親父ギャグが大受けし、アルバムはゴールド・ディスクに輝いた。
旅先で偶然フィッシャーマンズ・フレンズの浜辺ライブを見かけた音楽マネージャーのダニーは、上司に彼らとの契約を命じられ、小さな港町に居残るハメに。民宿の経営者でシングルマザーのオーウェンはダニーの失言に敵意をむき出しにしていたが、彼が見せた音楽への情熱に心を動かされる。契約できたものの、はたしてフィッシャーマンズ・フレンズは生き馬の目を抜く音楽業界でメジャーデビューできるのか?
バンドとと意地悪な上司に振り回される主人公ダニーには、『ローグ・ワン / スター・ウォーズ・ストーリー』(16)のティヴィックで知られるダニエル・メイズ。ダニーと恋に落ちるオーウェンには、日本では20年公開予定の話題作『ダウントン・アビー』(19)で主演の1人に抜擢されたタペンス・ミドルトン。オーウェンの父でバンドのリーダーを務める人間嫌いのジムには『ROMA/ローマ』(18)で家族を捨てる父親役で注目されたジェームズ・ピュアフォイが。オーウェンの祖父ジェイゴに『輝ける人生』(16)で亡妻を忘れられないテッドを演じたジェイムズ・ヘイマン。『私は、ダニエル・ブレイク』(16)で世界を泣かせたデイヴ・ジョーンズもテッドの親友役で顔をのぞかせる。
製作陣は日本でもスマッシュヒットした人生賛歌『輝ける人生』(17)のプロデューサーカップルのメグ・レナードとニック・モアクロフト、そして制作会社のフレッド・フィルムズだ。監督は、青春映画『キッズ・イン・ラブ』(16)の新鋭クリス・フォギン。自然豊かな町で仲間や家族に囲まれて暮らす漁師たちと、都会暮らしに疲れきった音楽業界人のカルチャーギャップを軽やかなタッチで描く。
人生には歌とビールとちょっぴりのユーモアが欠かせない。本物の音楽に価値観をひっくり返された男の成長と、海の男たちの熱い絆が爽快な人生賛歌。イギリスの港町sポート・アイザックから上陸!