イギリス南西部の小さな港町、ポート・アイザック。青い海と大西洋を見渡す丘陵地帯の絶景を求めて、多くの人々が訪れる風光明媚な観光地だ。しかし、音楽業界で鳴らしたダニー(ダニエル・メイズ)にとって、ポート・アイザックは人生を180度変える運命の土地だったのだ。
「彼らと契約を交わせ」
歌う漁師たちこと“フィッシャーマンズ・フレンズ”はリーダーでひねくれ者のジム(ジェームズ・ピュアフォイ)、毒舌家のジェイゴ(デヴィッド・ヘイマン)、彼の親友リードヴィル(デイブ・ジョーンズ)、パブも経営する最年少のローワン(サム・スウェインズバリー)など、海の男たち10名からなるコーラスバンドだ。週1回、港で慈善コンサートを行うが、バンド活動はあくまでも趣味。古くから伝わる舟歌を歌い、ローワンのパブでビールを飲んで騒いで息抜きしているのだ。先祖代々、漁師の仕事をしてきた彼らはメジャーデビューなど考えたことすらなく、ダニーの話に色めく。よそ者嫌いのジムは嫌味たっぷりに一蹴したが、やり手マネージャーで業界に知れ渡るダニーにすれば純粋な彼らを口説き落とすなんて朝飯前のこと。ジムの娘、オーウェン(タベンス・ミドルトン)が経営するB&Bに泊まり、彼らの漁船に乗り込んで懐に飛び込む作戦に出る。
ダニーは「契約なんて冗談」とせせら笑うトロイと決別し、フィッシャーマンズ・フレンズを引き連れてロンドンへ向かう。ライバル会社に売り込んだところ、漁師バンドの意外性が若いスタッフの目に留まり、テレビ番組への出演が決定する。それも、全国民が注目する女王の誕生日を祝う特別番組だ。フィッシャーマンズ・フレンズの成功でトロイの鼻を明かしたいダニーは、生中継で彼らが得意げに歌い出したメロディを聴きがく然。それは国歌『God Save the Queen (女王陛下万歳)』ではなく、あろうことかコーンウォール賛歌だったのだ。せっかくのチャンスを台無しにしたと頭を抱えるダニーは知らなかった、彼らのパワフルな歌声と茶目っ気が全英中に笑いを届けたことを。そして、メンバーも知らなかった、心の拠り所であるザ・ゴールデン・ライオン・パブが密かに売却されていたことを……。