観客に手に汗握るひとときを提供するスリラー映画には、状況設定を極端に限定することで緊迫感を高める“シチュエーション・スリラー”というサブ・ジャンルがある。ソリッド・シチュエーション・スリラーと銘打って2004年に日本公開された『ソウ』シリーズの第1作以降に定着したこのジャンルは、これまで公衆電話ボックス、エレベーター、プール、ATM、サウナルーム、スキーのリフト上、地中に埋められた棺桶の中など、ありとあらゆる奇抜なシチュエーションを扱ったスリラーを生み出してきた。
もはやアイデアは出尽くしたかと思われたこのジャンルに新たに参入した『ホーリー・トイレット』は、その名の通り“トイレ”を舞台にしたドイツ映画だ。工事現場の仮設トイレの中に閉じ込められ、身動きが取れなくなった男の悪夢のような運命を、一瞬たりとも目が離せない予測不能のストーリー展開と怒濤のサプライズ満載で映像化した衝撃作である。
頭部を負傷して意識を失った建築家フランクが、リゾートホテルの建設現場で横倒しになった仮設トイレの中で目を覚ます。記憶の一部が吹っ飛び、この異常な状況がのみ込めないフランクは、トイレの周りに大量の解体用ダイナマイトが仕掛けられ、34分後の午後2時ジャストに爆破が行われることを知る。この非常事態を生き延びるには、誰かに助けを求めるか、もしくは自力で脱出しなくてはならない。ところが右腕に鉄筋が突き刺さって動けないうえに、友人である市長ホルストの邪悪な思惑が明らかになり、時間だけが空しく過ぎていく。刻一刻と爆発のリミットが迫るなか、絶体絶命のフランクに打つ手はあるのか……。
2016年、卒業制作で短編『Laserpope(原題)』を発表したのち、フリーランスの映画監督として、中小規模のCMやテレビ番組に携わるようになる。
観客が心から笑えるように、緊迫感のあるシーンや、思わず驚いてしまうような要素を散りばめるなど、楽しませるような作品作りを続けている。本作で長編デビューを果たす。
<監督作>
「Laserpope(原題)」|予告編|4分
「Seven Hands(原題)」|短編|16分
「Misguided(原題)』|短編|5分
1981年ドイツ生まれ。TVドラマを中心に活躍している。主な映画出演作は「Equinox」(20)、「The Accidental Rebel」(19)、「Am Ende ist man tot」(18)など。
1969年ドイツ生まれ。10歳から俳優としてのキャリアをスタートし、その後TVシリーズを中心に活躍。2009年、クエンティン・タランティーノ監督作『イングロリアス・バスターズ』に出演。その後、『命をつなぐバイオリン』(11)、『デンジャラス・ミッション』(16)、『悪魔の愛人:リダ・バーロヴァ』(16)などに出演している。
1991年ドイツ生まれ。2009年にTVシリーズでデビュー。その後、TV・映画で活躍する。2013年から17年までバイエルン劇場アカデミーに入学し演技を学び、卒業後2019年までキール劇場に所属し、その間、舞台俳優に専念する。本作で再びスクリーンに復帰した。