オスロ監督:
コンニチハ。アニメ映画の祖国と言われる日本で上映ができるということで、とても嬉しく思っています。日本のアニメーションは、フランスのアニメーション界を育ててくださったといっても過言ではありません。日本のアニメ界に感謝するとともに、本作の吹き替え版を担当してくださったお二方、そして長年の友人でもある高畑さんにも大変感謝しています。
今日始めて日本語吹き替え版を観て、とても素晴らしいものだと感じました。台詞の長さも元の長さとぴったりと合っていて、完璧といえる出来栄えです。高畑さんの作品はすべて拝見しているので、もちろん予測はしていましたが…
フランスで公開されるアニメーション作品はハリウッド・アニメぐらいなので、この作品は当初、公開することさえ大変でした。しかしお金のかからない皆さんの口コミで大ヒットを収め、記録的な成績を収めることができたのです。世界中のいろいろな国で公開されていますが、いよいよ日本でも公開を迎えました。日本公開は私にとって長年の夢でしたので、大きな喜びを感じています。
幼少時代をアフリカ・ギニアで過ごしたというオスロ監督。アフリカでの経験を活かし、また監督独自の視点でその世界を広げ、作品が完成しました。
オスロ監督:
私は6〜12歳までギニアで過ごしました。本作のアフリカのイメージを創り上げたのは、この経験からです。アフリカの人々は、どこにいても祖国が分かるといいます。白人の人がアフリカについての映画をつくったとしても、それが祖国についての作品だとは感じないのです。またこの映画の冒頭で、お腹の中の赤ちゃんに声をかけて、自然に産まれてくるシーンがありますが、これはアフリカでは自然なことなので、最初のシーンとしたまでです。アフリカの人々は、体にまつわることを自然に受け入れられています。そこに私は感動を覚え、表現したいと思いました。この作品のベースはアフリカの神話ですが、キリクの「どうして?」という問いかけからは私が考え出した物語です。昔話にはこの問いかけはありませんので、その先は私が考えました。
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日本語版翻訳・演出を手掛けた高畑勲監督も喜びの挨拶を述べました
高畑監督:
今日は大変喜んでいます。というのも、フランスで98年に公開され、私がこの作品を観たのは去年の3月になります。その時本当に感心し、どうして日本ではこのような作品が公開されないのだろうか?と強く思いました。その後ジブリに持ち帰って相談し、皆さんのお陰で今日の日を迎えることができました。「なぜ?どうして?」という日本のアニメーションにはないテーマが描かれている作品です。大人から子供まで、多くの方々にぜひ観て頂きたいです。
倒置法を用いたのに気づかれた方も多いかと思いますが、冒頭の「母さん、僕を生んで」など、普通ではない、完結だけど力強い台詞になるよう工夫しました。それなりに作者の意図を表現できたのでは、と思っています。
神木くんは本当に上手ですし、また浅野さんがこの役を快諾してくださった時点で成功は間違いなし、と思いました。(笑)
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監督から絶賛された浅野温子さん。カラバ(魔女)をイメージした衣裳で登場し、制作中のエピソードなどを披露しました。
浅野温子さん:
カラバの威厳を表すのに苦労しました。普段アフレコでは緊張しないのですが、吹き替えとなると絵を見たとたんに思わず力が入ってしまい、テストの方がうまくいったり…という時もありました。なので監督にはとても迷惑をかけてしまいました。演じるに当たっては、高畑監督からカラバの女性としての悲しみや憎しみを大事にしてくれればいいよおっしゃってくださって、リラックスさせてこの作品は大人から若い人へ、そして子供たちへ・・・この作品は頭で考えるのではなく、心でスッポリと入って頂きたいです。
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キリク役の神木隆之介も、楽しんでこの役にチャレンジできたよう
神木隆之介くん:
キリクは思いやりがあって勇気のある、そんな子です。だから今回担当させてもらってとても光栄です。キリクのいろんなことに挑戦したり、努力するところが、自分と似ていると思います。自分ができないことを一生懸命やって、できるようになることは楽しいです。この役も大変というよりも楽しかったですし、これからもいろんなことをやってみたいです
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最後に、オスロ監督よりメッセージが送られました。
オスロ監督:
私の精一杯の正直さ、力をこめてつくりました。そして高畑監督も最大限の協力をしてくれました。これからはみなさんの力をください。よろしくお願いします。
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