大学で学んだ知識を生かす仕事
に就くことができず、鬱々としながらウェ
イトレスをする32歳のペトルーニャ。
知人のツテで仕事の面接の口を探し
てきた母親は、ペトルーニャに言う。
「きれいな恰好をしていって。本当の
年齢でなく、25歳というのよ」。
友人からマシなワンピースを借りた
ぺトルーニャが指定された場所に行く
と、そこは多くの女性がミシンを踏む縫
製工場だった。面接担当の男性責
任者はスマホをいじりながらペトルー
ニャに年齢を聞くと「42歳に見える」と
一言。そして「デスクワークの経験は
ないが、大学で学んだ知識がある」と
語るぺトルーニャに近づくと、そのスカー
トに手をかけ、からかった末に言う。
「裁縫はできず、就職経験もない。
事務もしたことがない。見た目もそそらな
い」
最悪の面接の帰り道、ぺトルーニャ
は、キリストの受洗を祝う「神現祭」の
群衆に遭遇する。司祭が川に十字架
を投げ込み、それを最初に見つけた
男は、1年幸福に過ごせると信じられ
ている祭だ。多くの男たちが半裸の姿
で川に向かう。その人波に飲まれ川沿
いまで来たぺトルーニャは、投げ込ま
れると同時に自分の前に流れてきた十
字架を見て、思わず川に飛び込み、
それを手に取った。
「女性がとったわ!」
だが男たちは、群衆から上がった
そんな歓声を無視し、十字架をぺト
ルーニャの手から奪い取る。「私が最
初に取ったのに!」「女が取るのは禁
止だ!」いきり立つ男たちをなだめな
がらも、前代未聞の事態に戸惑う司
祭。その混乱に乗じ、ペトルーニャは
十字架を奪い取って逃亡する。
消えたペトルーニャに怒る男たち に、警察署長までが加わって、現場は さらなる混乱に陥っていた。「神現祭」 の取材に来たテレビ局の女性リポー ター、スラビツァは、警察署長や司祭 に別の取材を始めている。「女性が 十字架を取るのは問題ですか? なぜ ですか? どこに違法性が?」と尋ねる スラビツァに、「子供に男だけがとれる と教えている」と答える司祭。騒ぎを大 きくしたくない警察署長は「君の仕事 はイカれた女を追うことか?」と尋ねる が、「怒り狂った群衆が、彼女を追い かけているんですよ」とスラビツァは一 歩もひかない。
一方ペトルーニャの家では、びしょ
濡れで帰った娘をいぶかっていた母
親が、テレビが報じる「田舎町の珍
事」というニュースで、事の次第を知り
怒り狂う。
「罰当たりのバケモノ! 近所に何を
言われるかわからない! 出ていけ!」
その母に蹴りを入れて、ペトルー
ニャは言い放つ。
「十字架は私のもの! 絶対に渡さな
い」
だが、やがてやってきた警察に、ペ
トルーニャは連行されてしまう……