アウシュヴィッツから生還した妻と、
変貌した妻に気づかない夫。
奇しくも再会を果たしたふたりは、
再び愛を取り戻すことができるのか――。
1945年6月ベルリン。元歌手のネリーは顔に大怪我を負いながらも強制収容所から奇跡的に生還し、顔の再建手術を受ける。彼女の願いはピアニストだった夫ジョニーを見つけ出し、幸せだった戦前の日々を取り戻すこと。顔の傷が癒える頃、ついにネリーはジョニーと再会するが、容貌の変わったネリーに夫は気づかない。そして、収容所で亡くなった妻になりすまし、遺産を山分けしようと持ちかける。
「夫は本当に自分を愛していたのか、それとも裏切ったのか――」。その想いに突き動かされ、提案を受け入れ、自分自身の偽物になるネリーだったが・・・。
『東ベルリンからきた女』の監督・主演トリオが描く、第二次大戦後直後の深い葛藤。亡命作曲家クルト・ヴァイルの名曲「スピーク・ロウ」がやさしくささやきかける。
監督は、前作『東ベルリンから来た女』でベルリン国際映画祭銀熊賞(監督賞)に輝いたクリスティアン・ペッツォルト。主演に再びニーナ・ホスとロナルト・ツェアフェルトを起用し、愛の真理を問うサスペンスフルな心理劇を作り上げた。削ぎ落とされたセリフと無駄のない演出に、亡命作曲家クルト・ヴァイルの名曲「スピーク・ロウ」が艶やかに映える。ヒッチコックの『めまい』を彷彿とさせる傑作と世界が絶賛した本作。
戦後70年の今、”収容所のその後”を生きる夫婦の愛の行方から、私たちは目を逸らすことができない。